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東京高等裁判所 平成9年(ネ)136号 判決 1997年6月30日

控訴人(被告)

山田邦信

訴訟代理人弁護士

高島秀行

被控訴人(原告)

杉山治夫

主文

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人の請求を棄却する。

三  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

主文と同旨

二  被控訴人

1  本案前の答弁

(1) 本件控訴を却下する。

(2) 控訴費用は控訴人の負担とする。

2  本案に対する答弁

(1) 本件控訴を棄却する。

(2) 控訴費用は控訴人の負担とする。

第二  事案の概要

一  事案の骨子

本件は、被控訴人が、昭和四九年一一月二九日、控訴人との間で締結したとする消費貸借契約に基づいて、控訴人に対し、貸金残元本と延滞利息及び遅延損害金の支払いを求めた事案である。

原審は、控訴人が、適式な呼出しを受けながら口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しなかったとして、請求原因事実を自白したものとみなし、平成八年一〇月一七日、被控訴人の請求を認容する旨の判決を言い渡した。この判決の正本は、同月二二日、特別送達の方法により送達が図られ、控訴人の住民票上の住所である埼玉県三郷市早稲田<番地略>において、控訴人の妻山田千恵子(以下「千恵子」という。)が同居者として受領した。

控訴人は、平成九年一月九日、本件控訴を提起し、被控訴人との間の消費貸借契約の締結を否認するなどして、本訴請求を争った。これに対し、被控訴人は、本件控訴の適法性を争うとともに、控訴人に対する請求の原因を、昭和四九年一一月二九日、控訴人の妻千恵子を借主として締結した消費貸借契約(以下「本件消費貸借契約」という。)について、控訴人が連帯債務者となることを約した、と変更した。

二  主たる争点

当審における主たる争点は、

1  本件控訴の適法性に関し、

(1) 原判決正本の送達は適法にされたか否か、

(2) 本件控訴は民事訴訟法一五九条の不変期間経過後の訴訟行為の追完の要件を充たしているか否か、

2  本訴請求の当否に関し、

被控訴人が、昭和四九年一一月二九日、控訴人の妻千恵子を借主として締結したとする本件消費貸借契約について、控訴人が連帯債務者となることを約したか否か、

である。

三  主たる争点に関する被控訴人の主張

1  本件控訴の適法性について

本件訴訟の関係書類の送達は、適法にされており、本件控訴は、民事訴訟法一五九条に定める不変期間経過後の訴訟行為の追完の要件を充たしていない。

すなわち、控訴人の住所は、あくまで自宅のある埼玉県三郷市早稲田<番地略>であり、控訴人が神奈川県川崎市川崎区追分町<番地略>のマンションに居住しているとしても、それは世間でよくある単身赴任のようなもので、単に二重生活をしているに過ぎない。控訴人の住民票上の住所は現在でも三郷市であり、控訴人所有名義の自宅には、現在でも控訴人の名のみの表札が掲げられている。確かに、控訴人は、毎日三郷市に帰宅するわけではないが、千恵子とは控訴人の所持する携帯電話によってこまめに連絡を取り合っており、週末には三郷市の自宅に帰っている。

なお、控訴人の妻千恵子が本件消費貸借契約に関して控訴人の名義を冒用した事実はない。

よって、本件控訴は、控訴期間を徒過した不適法なものであるから、却下されるべきである。

2  本訴請求原因について

(1) 被控訴人は、昭和四九年一一月二九日、借主を控訴人の妻千恵子とし、連帯債務者を控訴人として、四五〇万円を、利息・月二分、遅延損害金・年三割、最終の弁済期・昭和六一年一二月二九日、等の約定により貸し渡した。

(2) しかし、千恵子及び控訴人は、被控訴人に対し五五万円の支払いをしただけで、残金を支払わない。

(3) そこで、被控訴人は、控訴人に対し、貸金残金三九五万円及びこれに対する昭和四九年一一月三〇日から昭和六一年一二月二九日までは年一割五分の、同月三〇日から支払い済みまでは年三割の各割合による金額の支払いを求める。

四  主たる争点に関する控訴人の主張

1  本件控訴の適法性について

(1) 本件訴訟は、平成八年八月八日に提起された。しかし、控訴人は、平成六年五月二四日ころ、埼玉県三郷市早稲田<番地略>の自宅から、神奈川県川崎市川崎区追分町<番地略>のマンションに転居し、同所で居住していたため、旧住所に送られてきた本件訴状、期日呼出状等の訴訟書類を受け取ることができなかった。

ところで、右訴訟書類は、控訴人の妻千恵子が同居人として受領しているが、控訴人と千恵子は別居していたのであり、千恵子は控訴人の同居人ではなかったから、千恵子の受領は、民事訴訟法一七一条に定める補充送達の要件を欠くものであるし、本件消費貸借契約について、千恵子が控訴人の名義を冒用し、あるいは冒用に関与した事情があり、控訴人と千恵子とは利害相反の関係にあるので、この観点からも、右訴訟書類の補充送達は無効である。

(2) また、原判決正本は、平成八年一〇月二二日、控訴人の旧住所である埼玉県三郷市早稲田<番地略>において、千恵子が同居者として受領しているが、千恵子は、このことを控訴人に連絡もせず、原判決正本を控訴人に渡さなかった。

このため、控訴人は、原判決が言い渡されたことについて知り得ないでいたところ、平成九年一月七日、被控訴人から、控訴人の勤務先である株式会社福田組に給料債権の差押命令が送達された。そこで、控訴人は、同日、控訴人訴訟代理人に相談したうえ、控訴人訴訟代理人に対し、本件訴訟が提起され、判決が出ているのか否かを確認し、判決が出ている場合には、控訴を提起することを依頼した。

控訴人訴訟代理人は、右同日、本件訴訟記録の閲覧謄写を申請し、翌八日、本件訴訟記録を閲覧して、本件訴訟が提起され、原判決が言い渡されていることを確知した。そこで、控訴人訴訟代理人は、翌九日、本件控訴を提起した。

仮に本件訴訟書類の補充送達が有効であるとしても、右のように、控訴人は、その責めに帰すべからざる事由により原判決についての控訴期間を遵守できなかったのであり、原判決を確知し、責めに帰すべからざる事由の止んだ平成九年一月八日の翌日である同月九日に本件控訴を提起したのであるから、民事訴訟法一五九条の規定により、控訴の提起に関する訴訟行為が追完されたというべきであって、本件控訴は、適法である。

2  本訴請求原因についての認否

本訴請求原因事実は否認する。控訴人は、被控訴人主張の本件消費貸借契約について、連帯債務者となることを約束したことはない。

第三  主たる争点に対する裁判所の判断

一  争点1――本件控訴の適法性について

1  証拠(甲三、四、一五ないし一七、二〇ないし二四、乙一ないし四、九の三、七、一〇ないし一五号証、控訴人本人の供述)並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。

(1) 本件訴訟は、平成八年八月八日に提起され、同年九月二六日の第一回口頭弁論期日の呼出状、訴状副本及び答弁書催告書については、特別送達の方法により控訴人に対する送達が図られ、同年八月二八日、控訴人の住民票上の住所である埼玉県三郷市早稲田<番地略>の自宅(以下「三郷市の自宅」という。)において、控訴人の妻千恵子が同居者としてこれを受領した。

しかし、控訴人は、同年九月二六日の第一回口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しなかった。

そこで、原審裁判所は、同日、本件訴訟の口頭弁論を終結し、同年一〇月一七日の第二回口頭弁論期日において、被控訴人の請求を認容する旨の判決を言い渡した。

右の判決の正本については、特別送達の方法により控訴人に対する送達が図られ、同月二二日、三郷市の自宅において、千恵子が同居者としてこれを受領した。

(2) ところで、控訴人は、建築業を営む株式会社福田組に勤務し、現場代理人として働いているが、昭和六二年四月一日ころ、前記自宅を取得し、妻千恵子及び子供たちと同居して生活していたところ、平成三年ころから川崎市方面が現場となっていた関係で、通勤の便宜等を考慮し、平成六年五月二四日、神奈川県川崎市川崎区追分町<番地略>のワンルームマンション(以下「川崎市のマンション」という。)を賃借し、そのころから、普段は川崎市のマンションで寝泊まりし、週末には三郷市の自宅に戻るといった生活を送るようになった。

控訴人と千恵子との夫婦関係は、千恵子が控訴人に隠れて何度か借金をしたり、控訴人に無断で多額の買物をし、このため控訴人がその返済に苦労したことや千恵子が浮気をしたこともあったことなどから、従前から夫婦の会話が余りないような仲のよくない状態が続いていたが、同年一一月ころ、今度は控訴人の女性関係が原因で喧嘩となり、千恵子が控訴人に家を出ていくように言ったこともあって、それ以降は、控訴人と千恵子の夫婦関係は冷え切った状態となり、控訴人は、余り自宅に戻ることがないようになった。

しかし、その後も、控訴人と千恵子とは、必要に応じて電話により連絡を取り合うこともしており、また、千恵子は、従前から控訴人宛てに送られてきた郵便物等は別に取り置いておくようにしており、控訴人は、三郷市の自宅のある団地の役員をしていた関係から、少なくとも毎月一回は、役員会に出席する折りに自宅に立ち寄り、これらの郵便物等を持ち帰るといった生活を送ってきた。なお、三郷市の自宅の表札も控訴人の姓名が掲げられたままである。ちなみに、控訴人は、千恵子と離婚したいと考えているが、未だ中学三年生の子がいることなどから、離婚に踏み切れないでおり、また、このような子供の教育上の配慮等から、住民票上の住所を川崎市に移さないできた。一方、千恵子も、控訴人との離婚を考えてはいるが、子供が自立するまでは離婚はしないつもりでいる。

(3) 千恵子は、控訴人宛ての本件訴訟の関係書類や原判決の正本を受領したが、これらの書類等を控訴人に渡すと、自分が控訴人に無断で借金したことなどが判明し、厳しく叱責されたり、喧嘩になったりすることを心配してか、このことを控訴人に告げておらず、これらの書類等を控訴人に渡してもおらず、また、控訴人が自宅から持ち帰った郵便物等中にも、本件訴訟の関係書類や原判決の正本はなかった。

(4) 平成八年一二月末ころないし平成九年一月の正月明けころ、控訴人の勤務先である福田組に被控訴人が申し立てた控訴人の給料債権の差押命令が送達された、そこで、控訴人は、平成九年一月七日、控訴人訴訟代理人に相談し、控訴人訴訟代理人に対し、被控訴人の控訴人に対する訴訟が提起され、控訴人に金銭の支払いを命じる判決が出されているか否かを確認し、判決が出されている場合には、これに対し控訴を提起することを依頼した。

控訴人訴訟代理人は、同月八日、本件訴訟記録を閲覧して、本件訴訟が提起され、原判決が言い渡されていることを確認した。そこで、控訴人訴訟代理人は、翌九日、本件控訴を提起した。

(5) なお、右のように、千恵子が本件訴訟の関係書類や原判決の正本を受領したことを控訴人に秘匿していたことに加え、被控訴人が本件消費貸借契約の成立を証明する書面であるとして提出した「長期自由支払 金銭借用証書」と題する書面(甲三号証)及び「領収証書」と題する書面(甲四号証)における「山田千恵子」と「山田邦信」の筆跡や被控訴人が代表取締役を務める日本百貨通信販売株式会社を原告とし、控訴人を被告とする別件貸金請求訴訟における千恵子の証言内容(乙一二号証)を総合すると、右の本件消費貸借契約に係る契約書等に控訴人が連帯債務者として表示されていることについては、その具体的な態様を的確に認定するには至らないが、千恵子が何らかの関与をしていると窺われるところである。

2  右の認定事実及び訴訟関係書類の確実な送達とともに迅速な送達の実現を図るという補充送達の制度の趣旨に照らして考量すれば、以下に説示するとおり、原判決正本の控訴人に対する送達は、民事訴訟法一七一条一項の規定による補充送達として適法にされたものと認めるのが相当というべきであるが、本件控訴は、民事訴訟法一五九条の不変期間の追完の要件を充たしているものと認めるのが相当というべきである。

(1) 本件訴訟の関係書類や原判決正本については、平成八年八月二八日及び同年一〇月二二日、いずれも特別送達の方法により控訴人に対する送達が図られ、控訴人の住民票上の住所である埼玉県三郷市早稲田<番地略>の自宅において、控訴人の妻千恵子が同居者としてこれらを受領したものであるところ、前示1(2)のとおり、そのころ、控訴人は、日常的には川崎市のマンションで起居していたものの、三郷市の自宅と完全に生活関係が切断されたというわけではなく、少なくとも毎月一回は自宅に寄って、控訴人宛てに送られてきた郵便物等を持ち帰るといった生活を続けてきたのであり、住民票上の住所も控訴人の判断に基づいて三郷市の自宅所在地に置いたままとしてきた等の事情を考慮すれば、三郷市の自宅をもって、本件訴訟の関係書類や原判決正本の受送達者である控訴人の「住所」又は「居所」であるというを妨げないものと認めるのが相当というべきである。

また、千恵子が受送達者である控訴人の「同居者」として本件訴訟の関係書類や原判決正本を受領したころ、控訴人は、前示1(2)のとおり、千恵子と別居生活を送っていたのであるが、そうはいっても完全に千恵子との夫婦としての共同生活関係がなくなったわけではなく、控訴人と千恵子とは必要に応じて随時電話により連絡を取り合うこともしており、控訴人は、少なくとも毎月一回は自宅に立ち寄っていた等の事情を考慮すれば、控訴人と千恵子とは、社会通念上、一応妻の千恵子において裁判所からの特別送達の方法による控訴人宛ての書類を受領すれば、それらの書類が受送達者である控訴人に遅滞なく渡されることを期待することができる生活関係にあったというべきであるから、千恵子をもって、本件訴訟の関係書類や原判決正本の受送達者である控訴人の「同居者」であるというを妨げないものと認めるのが相当というべきである。

右のとおりであるから、民事訴訟法一七一条一項の規定による補充送達としてされた控訴人に対する本件訴訟の関係書類や原判決正本の送達は、適法にされたものというべきである。

(2)  そして、本件においては、控訴人と千恵子とは、右のように、社会通念上、一応妻の千恵子において裁判所からの特別送達の方法による控訴人宛ての書類を受領すれば、通常、それらの書類が受送達者である控訴人に遅滞なく渡されることを期待することができるというべき生活関係にあったものの、前示1(3)のとおり、千恵子は、本件訴訟の関係書類や原判決の正本を受領したが、殊更控訴人に秘してこのことを控訴人に告げておらず、これらの書類等を控訴人に渡してもおらず、このため、控訴人は、平成八年一〇月一七日に原判決が言い渡されたことを知らないままに時日が経過し、前示1(5)のとおりの過程を経て、原判決に対する控訴期間が経過した後に本件控訴を提起することとなったのであるところ、前示のところよりすれば、本件訴訟の関係書類や原判決の正本を受領したことを控訴人に秘匿していた右の千恵子の振舞いは、千恵子が、本件消費貸借契約に係る契約書等に控訴人が連帯債務者として表示されていることについて何らかの関与をしていることにその原因があるのではないかと推察されるのであって、このような特別の事情が認められる本件においては、控訴人は、その責めに帰すべからざる事由により原判決についての控訴期間を遵守することができなかったものというべきであり、かつ、その事由の止んだ後の一週間内に本件控訴を提起したということができるから、本件控訴は、民事訴訟法一五九条の規定する不変期間の追完の要件を充たしているものと認めるのが相当というべきである。

3  右のとおりであるから、控訴人の本件控訴は、適法というべきである。

二  本訴請求の当否について

1  被控訴人は、甲三号証として提出した「長期自由支払 金銭借用証書」と題する書面が本件消費貸借契約の成立を証明する書面であり、甲四号証として提出した「領収証書」と題する書面が、控訴人及び千恵子において、本件消費貸借契約に基づく貸金を受領した際に作成して被控訴人に差し入れた書面である旨主張し、被控訴人本人は、当審における本人尋問において、その主張に沿った供述をする。

しかし、これと反対趣旨の控訴人本人の供述と照らし合わせると、被控訴人本人の右供述は、たやすく採用することができない。そして、甲三号証と四号証の各連帯債務者欄の控訴人名義の各署名を比較対照して検討すると、これらの控訴人名義の署名は、一見すると類似性があるようにも見受けられるが、これを更に子細に考察すると、例えば、甲三号証においては、山田の「山」の字の第一画の縦線が第二画の横線に接しているのに、甲第四号証においては、「山」の字の第一画の縦線が第二画の横線に接することなく、下方で左に跳ねていること、あるいは、甲三号証においては、山田の「田」の字の第二画の横線が第一画の縦線に接して右方に伸びているのに、甲四号証においては、「田」の字の第二画の横線は第一画の縦線に接することなく始筆していることなど、かなり特色がある相違点を明確に認めることができるのであって、このように異なった特色をもつ二つの控訴人名義の署名が、自らの氏名を書き慣れた者によって、同一の日の同一の機会にされたものであると認めることは困難であるといわざるを得ない(なお、前記甲三号証及び四号証の貸主の記載は、「日本百貨通信販売株式会社内 杉山治夫」とされているが、乙九号証の七によれば、この「日本百貨通信販売株式会社」なる会社は、昭和五〇年九月九日に「株式会社相互商会」が商号変更してできたものであって、本件消費貸借契約が締結されたとされる昭和四九年一一月二九日には未だ「日本百貨通信販売株式会社」なる会社は存在していなかったことが認められるのであり、しかも、乙一三号証によれば、日本百貨通信販売株式会社を原告とし、控訴人を被告とする別件貸金請求訴訟に係る昭和四九年一一月一八日付けの「長期自由支払 金銭借用証書」と題する書面においては、貸主の記載は「株式会社相互商会」となっていることと照らし合わせると、本件における甲三号証及び四号証の貸主の記載は極めて不自然であるといわざるを得ないのであって、これらの書面が昭和五〇年九月九日以降に作成されたものである疑いを払拭できないといわざるを得ない。)。

また、上記甲三号証及び四号証の連帯債務者欄の「山田」なる印影が、控訴人の印章によって顕出されたものと認めるに足りる証拠はない。

2  以上のとおり、控訴人が、被控訴人主張の本件消費貸借契約について連帯債務者となることを約束した旨の被控訴人の主張事実(請求原因(1)の事実)に沿う前記甲三号証及び四号証の記載並びに被控訴人本人の前記供述は、いずれも採用することができず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

第四  結論

右のとおり、控訴人を連帯債務者とする本件消費貸借契約が成立したものと認められないから、被控訴人の本訴請求は理由がない。

したがって、被控訴人の本訴請求を認容した原判決は不当であるから、これを取り消し、被控訴人の本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官塩崎勤 裁判官橋本和夫 裁判官川勝隆之)

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